歯医者のつぶやき
2016/02/22
オヤシラズ
「親知らずのあたりが痛んでいるので今日すぐに診てほしい。」
緊急依頼の電話が入りました。
患者さんが来院すると、すぐに問診、診査、診断。その後、状況を説明し応急処置に入ります。そして、術後の説明をして終わりです。
最後に「何か質問はありませんか?」と私。
患者さんは言います。「親知らずは抜かないとダメですか?」
そのお顔には【抜歯をするのは嫌だな~】とはっきりと書かれています。痛みや腫れに恐れているのです。でもそれだけではなく、何か厄介なことになってしまったけど仕方が無いな、という諦めのお気持ちも垣間見えます。わかってはいるものの決心がつかないという所在なさで全身みなぎっているのです。
このようなやり取りは毎日の臨床でとても多く出くわすことです。
そして、いつも不思議に感じることがあります。親知らずの存在に一喜一憂していることです。どうも「親知らず=抜歯するもの」と認識されている方が多いようなのです。
結論から先に言うと、親知らずが正常に生えている場合は抜歯する必要はありません。親知らずは正しい歯です。形態的に退化傾向にある歯ではありますが、忌み嫌うべきものではありません。
むしろ、かわいそうな存在です。言わば、椅子取りゲームに負けた子のようなもの。
親知らず以外の歯は12歳位までに生えてきます。親知らずはこれよりずっと遅く、10代後半から20代前半に生えてきます。ですから親は子の歯が生えてきたのを知らない、ということが名前の由来といわれています。
一方、歯が並ぶ顎の骨は、昔の人に比べると次第に小さくなってきています。あまり噛まなくなった食生活の影響で顎の発達が不足しているためです。その結果、最後に生えてくる親知らずのスペースがないというケースが増えています。親知らずは生えたくてもその場所がないということです。
こうなると、親知らずは横に向いたり傾いりたりして生えてきます。その結果、歯ブラシが入りにくい空間が生まれ、そこにバイ菌が溜まり、虫歯や歯肉炎になりやすくなります。また頬っぺたの内側の粘膜を噛んで腫らせてしまうこともよくあります。このような場合は抜歯した方が良いことが多いように思います。
親知らず問題は二つあります。
一つは、痛んだり、大きく腫れてしまっているときは抜歯することができないということです。ほとんどの場合、まずは応急処置となります。すぐに症状が治まらないこともあります。特に大事な仕事や旅行の前に痛んでしまうと、その予定は台無しになってしまいます。ですから痛む前に抜歯しておくのは賢い選択です。また年齢を経るにつれて歯と骨が癒着し、抜歯を困難にすることがあります。早め早めの対応がいいかもしれません。
もう一つは、親知らずの隣の歯が傷む(痛む、ではなく)ことがあるということです。親知らずが磨きにくいということは隣の歯の境界部も同じです。親知らずは傷んだら抜歯すると良いのですが、隣の歯は長く残していきたい歯です。親知らずの存在がこの歯に悪影響を与える可能性があるなら、予防的にあらかじめ抜歯しておくのは良い判断だと思います。
一方、親知らずを残しておいて良かったということもあります。
もし、親知らずの手前の歯を失うことになったとき、入れ歯やブリッジの支台として有効に使えます。また、他の歯を失った時に代用歯として移植が可能な場合もあります。
親知らずは、抜いた場合や残した場合のメリットとデメリットをよく理解し、それらを天秤にかけて抜歯の判断をすべきだと思います。
お口の状況は個々違います。一概にこうするべきと言うことはできません。痛みが無くても、気になさっている方は気軽にご相談ください























